第19回近畿学術大会では、オンデマンド形式で受講し、
質問や感想等投稿もできます。出席確認をして受講証を発行します。
2週間、いつでも5つの講習を全て受講できます!
◆講習A
タイトル:ことば期までの発達 ―やりとりの着眼点に焦点をあてて―
講 師:中村 隆一(なかむら りゅういち)
講義概要:
英語で赤ちゃんはinfantあるいはbabyなどと表記されます。実はinfantはラテン語の《まだ話すことができないIN+fan》からきています。babyは性別を問題にしないときには、The
baby opened its eyes.というようにIt(それ)で受けることが一般的なんだとか。一方、日本では古来こんな私たちの様子を見た赤ちゃんは、きっと「わかってないな」とバブバブしているのではないでしょうか。とはいえ、ことばのない乳児期は、おとなたちにとってはやはりわかりにくい世界です。意志があることはみてとれる、しかしその中身はきわめてわかりにくい。そのため目を離さないように心がけるが、やっぱりよくわからない……。本当はやりとりをむつかしく考えすぎてるのかも知れません。
実際、よく知られているように音楽にはこの乳児期の子どもたちも興味と期待をひきつける力がありますし……。たぶんそこでのやりとりは、ともに音楽の体験を分かち持っているといえるのだと思います。では「一体何が体験され分かち持たれているのか」。この講義ではこんな点に注目してみなさんといっしょに学びたいと思います。
●赤ちゃんが見たいものの変化
●乳児期の大きな転機:赤ちゃんによる〈時間〉の発見
●「ミラー・ニューロン」という仮説
講師プロフィール:
【経歴と専門】
1954年生まれ。草津市在住。大学では教育心理学のコースに所属していましたが、乳児の研究をしました。乳児期の発達に関心があったこともあり、卒業後1977年から大津市役所で乳幼児健診の発達相談のスタッフとしてつとめました。その後、1990年からは障害児療育教室に異動になり、仕事の領域も幼児期の発達相談に広がりました。
こうした経験から、専攻は発達心理学ですが、発達相談にかかわる基礎的研究が大きな柱で、発達の基本構造やその移行(「発達段階」)の実証的な検討などに関心があります。2005年に大津市役所を退職し、立命館大学応用人間科学研究科(後、人間科学研究科)で研究と大学院生(修士課程)の教育に携わるとともに、大津市立やまびこ支援センターで主として障害のある成人の発達相談を続けてきました。2020年3月に、立命館大学、やまびこ支援センターいずれも退職し、現在は人間発達研究所で発達保障にかかわる資料整理とアーカイブ化に携わっています。
社会的な活動としては、上記人間発達研究所の所長、社会福祉法人おおつ福祉会評議員、茨木市障害者差別解消支援協議会会長(2020年8月まで)などがあります。
【著書】
単著:中村隆一『発達の旅 人生最初の10年 旅支度編』(クリエイツかもがわ 2013)
編集:中村隆一・渡部昭男編『人間発達研究の創出と展開――田中昌人・田中杉恵の仕事をとおして歴史をつなぐ――』(群青社 2016)
共著:田村和宏・玉村公二彦・中村隆一編著『発達のひかりは時代に充ちたか?――療育記録映画『夜明け前の子どもたち』から学ぶ――』(クリエイツかもがわ 2017)等
◆講習B
タイトル:音楽療法士の声について考える
~無理のない発声のための身体の整え方と使える声へのヒント~
講 師:水上 恵美(みずかみ えみ)
講義概要:
皆さんは、どんな声を持ちたいですか?ご自分の声について何か悩みがありますか?
音楽療法のセッションでは歌うだけでなく、話す、呼び掛けるなど、声を使う場面が多くあります。セッションの後、声がかすれたり、のどが痛くなったり、という経験はありませんか?
コロナ禍でのセッションでは、マスクを着用することが求められているかと思います。
さらに、今までよりも広い場所でのセッションや、クライエントと距離をとるなど、これまでよりも声が届きにくい中で苦労されている方も多いのではないでしょうか。
大きな声を出そうと、のどに必要以上の力を入れる。いつも適正でない高さで話している。
そんなことが続くと、のどには少しずつ負担がかかり、痛みや腫れなどにつながることもあります。
のどだけでなく身体全体をしっかりと使うようにすることで、のどの負担を減らし、無理なく発声ができるようになります。そして身体全体を使って出すほうが、響きがあり通りやすい声を作りやすいのです。
声が出しやすくなるような身体の整え方や姿勢について、体験してみましょう。身体の声を聞き、動かすことは、自分自身と向き合うことでもあります。そして、自分に合った調整やケアの仕方を見つけるヒントになればうれしいです。
講師プロフィール:
日本音楽療法学会認定音楽療法士 ボイストレーナー
滋賀大学教育学部(音楽・声楽)に在学中、サークル活動(障害児教育研究会・しいのみ)での、音楽を通しての子どもとのかかわりについてレポートしたことがきっかけで、音楽療法と出会う。
4回生からの2年間山松質文氏が主宰するミュージックセラピイ研究会に参加する。
滋賀大学大学院(教育・音楽)修了後、音楽療法を実践する。
現在は、大東市立子ども発達支援センター非常勤音楽療法士
京都音楽院音楽療法専科講師
その他、児童デイや成人のデイセンターなどで音楽療法士として活動。
自分の声を大切にするボイストレーニングを実践するボイストレーナーとしても活動している。
また、「身体を整え声を整えるためのゆったりワーク」や「子どもと関わる人のためのほっこりワーク」を各地で開催している。
◆講習C
タイトル: 音楽療法を科学する~認知症を中心に
講 師: 佐藤 正之(さとう まさゆき)
講義概要:
認知症の症状は、中核症状とbehavioral and psychological symptoms of dementia (BPSD)
に分けられる。認知症の薬物療法以外をまとめて、非薬物療法と呼ぶ。「認知症疾患診療ガイドライン2017」(日本神経学会編)によると、この中で認知症の発症予防
(一次予防) と二次予防 (進行抑制) に有効性がほぼ確立しているのは、運動療法のみである。
音楽は情動にはたらきかけることから、BPSDに対する音楽療法の有効性が複数のシステマティック・レビューで報告されている。私たちは、三重県御浜町・紀宝町、ヤマハ音楽研究所との産官学共同研究で、健常高齢者と認知症患者の認知機能改善を目的とした音楽体操による介入を行っている。本講習では、現時点での認知症に対する音楽療法のエビデンスを紹介するとともに、私たちがこれまで行ってきた研究の一部を紹介したい。
講師プロフィール:
経歴
昭和38年 大阪生まれ
昭和57年 大阪府立三国丘高等学校卒業、相愛大学音楽学部器楽科入学
昭和61年 相愛大学卒業。府立高校音楽教諭を経て、
昭和63年 三重大学医学部入学
平成6年 同 卒業、同大学神経内科に入局
市立伊勢総合病院、東京都神経科学総合研究所等を経て、
平成15年7月 三重大学医学部神経内科助手
平成21年1月 東北大学大学院医学系研究科 高齢者高次脳医学講座 准教授。
平成22年4月 三重大学大学院医学系研究科 認知症医療学講座 准教授
令和 2年 8月 東京都立産業技術大学院大学 認知症・神経心理学講座 特任教授
専門医・学会
医学博士。
神経内科専門医、内科認定医、認知症専門医。
日本神経心理学会評議員、日本高次脳機能障害学会代議員、日本認知症学会評議員、認知神経科学会評議員、日本神経精神医学会評議員、日本音楽医療研究会事務局長。
◆講習D
タイトル: 音楽療法が注意機能にもたらす影響~自閉スペクトラム症児を中心に~
講 師: 上羽(糟谷) 由香(うえば(かすや) ゆか)
講義概要:
注意機能は私たちが日常生活を送る上で欠かせない機能のひとつで、認知機能の根幹をなす機能です。この機能に問題を呈する児童の場合、学習や認知発達だけでなく、コミュニケーション能力や社会性の発達にも影響がおよぶとされています。この講習では、まずその注意機能について児童用の注意検査を参考にしながら概説し、自閉スペクトラム症(ASD)児にみられる注意の問題について、中核症状と関連させながら詳述します。その後、音楽が児童の注意機能にもたらす影響を調べた実験研究からわかったことをご紹介し、音楽療法活動が児童の注意機能にどう作用しうるかについて考察します。ASD児の注意の問題は、ASDの中核症状として捉えるべきと考える研究者たちがいるほど重要視されており、また高頻度で生じる問題でもあります。私が研究と臨床の往復過程で学んだことをお伝えできればと思っています。
講師プロフィール:
Shenandoah大学大学院音楽療法コース修了後、同大学非常勤講師、くらしき作陽大学音楽学部音楽療法専修専任講師を経て、現在白菊園病院で音楽療法士として勤務しながら、京都大学大学院医学研究科客員研究員として研究にも取り組む。主な研究テーマは、神経発達症や神経疾患、注意機能、発話・言語機能に対する音楽の臨床応用。これらに関する研究論文や研究発表多数。
著書に「自閉症と音楽療法」(『特集 医療における音楽療法はここまで来た』成人病と生活習慣病、東京医学社)、「児童を対象とした音楽療法」(『音楽知覚認知ハンドブック』北大路書房)、翻訳著書に「神経学的音楽療法ハンドブック」(一麦出版社)、「新版 リズム、音楽、脳~神経学的音楽療法の科学的根拠と臨床応用~」(協同医書出版社)、「音楽療法入門(第3版)」(一麦出版社)がある。米国公認音楽療法士(MT-BC)。日本音楽療法学会認定音楽療法士、同学会代議員、同学会国際交流委員会委員長
◆講習E
タイトル:音楽療法士が守るべきSNSにおける法と職業倫理
講 師 :𠮷岡 讓治(よしおか じょうじ)
講義概要:
Ⅰ 職業倫理と法
1.総論
2.倫理綱領と法との関係
3.音楽療法士の職業倫理
Ⅱ 個別の法律、倫理(音楽療法士が守るべき利用者の権利)
1.総論
2.プライバシーの権利
3.肖像権
4.自己決定権(意思決定支援)
5.その他の権利
Ⅲ 具体例
(ガイドブックに沿って)
※事情により、多少変更の可能性があります
講師プロフィール:
〇略歴
昭和49年 中央大学法学部卒業
平成3 年 弁護士登録(第二東京弁護士会)
平成6 年 𠮷岡法律事務所設立
主に、債務整理事件、著作権を中心とする知的財産権事件に携わる
平成11年 日本看護学校協議会、同共済会の顧問弁護士に就任
看護師、臨床検査技師等の医療従事者の法律問題を取り扱う。講演活動開始
平成18年 特定非営利法人医療・介護法務支援ネットワーク理事長に就任
平成19年 特定非営利法人東京介護祉士会の顧問弁護士に就任
平成23年 アンカー法律事務所に事務所名変更
平成24年 一般社団法人日本看護学校協議会共済会理事に就任(~令和2年)
平成27年 公益社団法人日本介護福祉士会顧問弁護士に就任(~令和2年)
〇主要著書・論文
▶「看護学生のための法学」(2006年 特定非営利法人医療・介護法務支援ネットワーク)
▶「看護学生のための法学(改訂版)」(2009年 特定非営利活動法人医療・介護法務支援ネットワーク)
▶「臨床検査技師、衛星検査技師等に関する法律」改正の経緯と検査業務等にあたえる影響
(病体生理誌Vol.40No.1 2006年4月号通巻104号)
▶「介護職員の職業倫理について」(ふれあいケア2009年5月1日発行第15巻第5号)
▶「技術教育で何が教えられるのか」―臨地実習を廻る法的問題―(看護展望2009年5月1日発行第34号第6号通巻417号)
▶「職員と利用者を守る介護現場の法律講座」-基礎知識から判例まで-(2010年9月中央法規出版)
▶「看護学教育 臨地実習指導者実践ガイド」(矢野章永編 2012年1月医歯薬出版)
▶「これから学ぶ介護保険制度と法」(2016年日本加除出版株式会社)
▶「看護学生(医療系学生)のための法学(全訂版)」(2019年2月特定非営利活動法人医療・介護法務支援ネットワーク)
▶「一人暮らしの認知症高齢者の権利擁護と意思決定支援」(2020年5月老年精神医学雑誌第31巻第5号)
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